長い、長い間、彼とすれ違っていた。
この夏、忙し過ぎてすっかり頭が煮えていた彼は、苛々と気難しくひどく扱いにくいという、まるで別の人みたいな調子だった。激しく怒り狂ったかと思うと唐突に優しくなったり、次の瞬間には冷酷な言葉を投げつけて連絡を絶ってしまったり。そんな彼に振り回されて私もすっかり余裕を失くし、どの様に応対したらいいのか全くわからなくなっていた。
何がどうこじれてこんな風になっているのか、お互いに理解できないまま、殺伐とした数ヶ月が過ぎた。シンガポールと日本の距離感に、初めて本気で腹立たしさを覚えた。